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生産者の声
ベリーツ
樋口勝典さん(41歳)
大分県佐伯市
いちご(ベリーツ)生産者

新しい栽培に苦労した経験が
農家と産地の
対応力を磨くんです

 日本のいちごはこれまでに約200品種以上が開発されており、現状でつくられているのは100種類くらいだと思います。大分県は決して大きないちご産地ではないので、県内の生産者が思い思いに品種をつくっても力にならないんです。だから、小さな産地には小さな産地の戦い方があるということで、品種を3つくらいに絞って、協力し合いながら栽培技術を研鑽して産地の力を大きくしようとしています。今、多くの生産者が懸命に栽培に取り組んでいるのが、大分県の農林水産研究指導センターで誕生し、本格出荷5年目を迎えるベリーツという品種です。ただこの品種は、なかなか育てるのが難しいんですよ。多くの生産者が長年栽培してきた佐賀県が育成したさがほのかという品種と、全然違う性質をしているので、まだベリーツで安定的な経営は私も成り立っていませんね。なんとか、栽培技術を高めながらベリーツ栽培に新しく入ってくる人に、ゼロスタートだった技術を5スタートくらいに持っていけるように皆さんと頑張っているんですよ。

ここで生まれて育ったから  採れている人は凄く採れています。必要なのは、採れていない人を平均くらいまで底上げすること。そして、平均値の方々が安定的に栽培を続けられることです。私としては何とかつくりこなしたいという思いです。何と言うか、県に対する愛と言えば愛なんですかね。ベリーツは大分県が8年の歳月をかけて開発し、大々的に県のブランドとして発表もされました。大分県で生まれ育ちましたし、地元の皆さんの協力があって私達農家も地元で商売ができている。多くの農家が似た思いを持っているんじゃないですかね。慣れ親しんだ品種から新しい品種に切り替えるのは、とても勇気のいることですから。

意識を変える勇気を養う  栽培方法をマニュアル通りに変えるのは簡単ですが、経験から得た考え方や意識を切り替えるのが一番難しいんです。今は皆さんと協力してつくりこなす経験を積んでいると思っています。今後、次に新しい品種に出会ったときにもこの経験は大いに役立つでしょう。農業は天候や市場状況など、この先に何が起こるか分からない職業でもあります。何が起きても、何が出てきても考え方を切り替えられるように、頭を慣らしていくのは大事だと感じます。
 世界的には人口が増えているし、農業という産業は伸びしろがあると考えています。AIやスマート農業など、今以上の変化の波も来るでしょうから、上手く対応して時代に合った農業を続けていきたいですね。


ベリーツ

 大分県オリジナルのいちごで、鮮やかな赤色と円錐形が特徴です。独自規格「ベリーツドルチェ」が設けられており、大分県いちご販売強化対策協議会の会長でもある樋口さんは次のように説明します。「ドルチェは大玉で形はいびつな扇型をしています。先っぽの面積が広いので甘い部分が多いんですよ。形は変ですが『逆に美味いんだよね』と農家では良く食べられていたものをブランド展開したんです」。