全農
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生産者の声
アスパラガス
中井奈緒美さん(40歳)
三重県伊賀市
アスパラガス、
しいたけ生産者

発信すること、繋がることで
農家の可能性は
大きく変わると思います

 伊賀市で育ってきましたが6年前に就農するまでは、アスパラガスが伊賀市の特産品の一つであることを知りませんでした。私のように伊賀市で生まれ育っても知らない人はたくさんいるんじゃないかと結構ショックを受けたんです。農業の発信の弱さが浮き彫りになっていると実感し、それなら私が積極的に発信をしていき、少しでも伊賀市のアスパラガスを知ってもらえたら良いなという思いで、日々の作業をはじめさまざまな情報をSNSなどに投稿するようになりました。
 以前の私は保育士として働き、就農前は主婦でした。スーパーで買い物をする際に「どういう人がつくっているんだろう?」などと考えたことは、当然のようにありませんでした。しかし、自分が農業を始めてからは何を見ても「これはこういう感じで育てているのか?」などと、生産者の仕事や気持ちを想像するようになり、今まで以上に感謝を込めて食べるようになったと感じます。一つの作物ができるまでに、さまざまな工程を経て成長するストーリーがあることを知ってもらえば、食や農業に対する生活者の意識も違ってくると思うんです。

思いもしなかった就農  我が家のアスパラガスは義理の父親が定年後から始めました。「日本一のアスパラガスをつくる」と張り切っていたんですよ。しかし2016年に急に他界。アスパラガスの農地をどうするか相談した結果、私の主人も会社員をしており、他の人に委託する話でほぼ決まりかけていたんです。しかし、お義父さんが亡くなり家族全員が塞ぎがちになっていて、私自身も前を向くのが結構大変だったんです。そんな時、アスパラガス栽培に勤しむお義父さんの姿を思い出し、「私がお義父さんの意思を継ぐ」と突発的に決めました。
 家族の状況を変えたいという思いが決断理由であり、農業は正直、1ミリも興味がありませんでした。農業未経験な私が畑に出ることで、お義母さんをはじめ家族が手伝いに出てこないといけない状況を強制的につくった感じです。

カッコイイ農家  農業を継ぐ前の勝手な農家のイメージは、結構マイナスなものでした。だから、継ぐと決めた時にそういうイメージを持ったままでは進めないので、農家に見えないカッコイイ農家になると決めて、自分の好きなファッションをしています。やりたい格好で働けるのは農家の良い点の一つですし、私の中では農業をするモチベーションにもなっています。
 モチベーションでいうとSNSの存在は大きいです。農家は一人作業も多くて孤独な時間もたくさんあるんです。でも、成功も失敗も嬉しいことも落ち込むことも発信し、同じ農家ともSNSで繋がり、「こんな思いをしているのは自分だけじゃないんだ」と知れるのは支えになるんですよ。アスパラガスの裏作として数年前から始めたしいたけ栽培では、全国的な品評会で賞をいただきました。一昨年から主人も脱サラをして一緒に農業をするようになったので、今後も伊賀から自分たちの思う農業にいろいろと挑戦していきます。


アスパラガス

 昼夜の寒暖差が大きい伊賀盆地はアスパラガスの栽培に適しており、当地のアスパラガスは太さと柔らかさ、甘さに定評があります。生産者の中井さんは「ぜひ一度、生で食べてみてほしい」と自信を見せます。現在、伊賀市では30軒ほどの農家が手掛けており、JAいがふるさとでは産地拡大に力を入れます。中井さんが運営する瑞雲ファームでは、息子さんのアイデアから生まれたアスパラ茶も販売しています。