全農
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生産者の声
伊賀米コシヒカリ
(株)ヒラキファーム 農場長
森 大輔さん(39歳)
三重県伊賀市
水稲、
小麦、各種野菜 生産者

小さく起伏のある中山間地の
田んぼだから、美味しいお米の
良質な種籾ができるんです

 私が勤務する(株)ヒラキファームは伊賀市を拠点とする農業法人です。耕作面積は約100haで、そのうち約80haは水稲になります。水稲種子では約14~15haと、おそらく三重県下で一番広い面積で生産をしています。種子生産は主食用米以上に緻密な管理が不可欠です。特に異品種との混合が一番問題視されるため、前年の作業中にこぼれてしまった種籾が田んぼに少量でも残っていてはいけません。また、雑草を生えたままにすると、草と米が交配してしまう可能性もあります。混ざりが出ないような管理と環境が必要なので、三重県では種子生産は昔から、この地域のような起伏のある中山間地で行われてきました。中山間地で採れた種籾は伊賀盆地の特産品の一つである伊賀米コシヒカリをはじめ、みえのゆめ、酒米の山田錦などとして、平場で栽培されています。

中山間地のスマート農業  中山間地の田んぼは、種子生産には適している一方で、生産効率は良くありません。地域の高齢化も進んでおり、田んぼを辞める方がいる中で、当社の手掛ける面積が増えていきました。種籾を確保しないと県内で来年の田植えが滞りますから、限られた労働力でいかに生産性を上げるかが当社の大きな課題の一つです。
 当社では2020年から国のスマート農業技術の実証プロジェクトに参加しています。最先端のスマート農業機器を使い、いかに種子生産の生産性を上げられるかを試験しているんです。例えば、真夏の重労働の一つである防除作業。今まで30分かかっていた田んぼで、ドローン防除を導入すると、わずか2分くらいで完了します。他には田植え機は田んぼの水が高いと目印を失い真っ直ぐ走れないのですが、GPS付きの直進アシストを加えると、データに地点登録すれば、上空からの位置情報で真っ直ぐ走ってくれます。しかも、走りながら土壌の肥沃度を計測して適切な肥料の量を散布してくれるので、作業効率が大いに上がりました。

守るための変わる意識  田んぼに溜めた水量で堰を開閉する自動水門などは、電波の通信状態や電池の残量に左右されるなど課題も見えました。まだまだ改善の余地はありますが、これからはスマート農業を取り入れないと、地域の農地を管理しきれなくなると感じています。若くて意欲と体力のある人を雇用するためにも、農業も変わる部分は変わらないといけないと思いますね。そうしないと地域の農地を次代へ引き継ぐことができません。誰かが管理しないと直ぐに木々が生えてしまう。一度荒れると元に戻すのはものすごく大変なんで。この中山間地の田んぼや畑を守るのが当社の大前提であり、地域の人たちや関係者と協力して進んでいきたいと考えています。


伊賀米コシヒカリ

 四方を山に囲まれた伊賀盆地は、昼夜の寒暖差が大きく、良質な土壌と清流に恵まれており、古くから良質な米の産地として知られています。伊賀米コシヒカリは、日本穀物検定協会の食味ランキングでは最上位の「特A」の評価を、過去に何度も受賞しています。生産者の森さんは「味も香りも良く、粘りのあるお米です。かめばかむほど甘味が増し、冷めてもおいしいのが特徴ですね」と語ります。