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生産者の声
ダリア
                   
井上 侑さん(31歳)
                   
秋田県大仙市
                   
ダリア(花火ダリア)、
米 生産者
               
           
           
               

ダリアの一輪での存在感と
太く短く儚い感じに
心が大きく動いたんですよ

 約20品種のダリアを育てていて、初夏から秋にかけて早生から晩成まで品種をリレーして出荷するんです。圃場には露地とハウスで合わせて44畝あり、一つの品種につき2畝ずつ植えています。同じダリアでも品種ごとに世話の仕方があり、中にはその年に初めて手掛ける品種も混じるので、上手に収穫時期をずらしながらつくるのはなかなか難しいですね。自分は就農4年目の新人なので、JAの指導員や生産部会のベテランに教えてもらいながら進めています。

魅力ある花を育てる喜び  JA秋田おばこでダリア生産が始まったのは2011年です。スタートはたった1名の生産者の取り組みでしたが、数年後には専門部会が立ち上がり、2015年には生産者45名、販売額4,400万円と急成長を遂げた栽培品目です。
 自分も就農する前に「稲作の他に何かするなら高単価の花が良い」というような話を地元でよく耳にしました。それで一度、秋田県農業研修センターで花卉を勉強しようと思ったんです。さまざまな花を見たんですが、ダリアを初めて見た時のインパクトが凄かったんですよ。一輪の花で魅せる存在感があり、心に刺さりました。研修中に初めて触ったダリアはムーンワルツという品種です。ピンクと黄色の淡く優しい感じがとても美しくて、「花や美の世界とは無縁の人生を歩んできた自分でも、こんなに魅力のある花をつくれるんだ」とダリアで生きることを決めました。研修中にダリアの花持ちがあまり良くないことを知ったんですが、その儚さも心に来たんですよ。太く短くという感じが、凄くかっこ良いなと思いました。

心を動かす花の魅力  父親が兼業農家として米を手掛ける家に生まれ育ちましたが、就農する前は農業を少し手伝うくらいで学校を卒業してから約6年間は関東に働きに出ていました。地元に戻って研修センターに通ったのが25歳の時。きっかけは母の病死でした。病気になった母親が電話で「家族の力になってほしい」と言うんです。家には父と兄がいますが、料理をできるのは母親だけ。一人暮らしで何でもできるのは自分しかいなかったんですよ。母親が亡くなると父親が元気をなくしてしまって...。それで、少しでも力になれればと思って帰郷を決意したんです。約6年振りに戻った故郷は、時間の流れがゆっくりとした自然豊かな場所で、相変わらずだなと感じましたね。
 農業を実際にやってみると、想像以上に厳しい世界だなと言うのが正直な感想です。若いし体力でどうにかなると思っていましたが、天候や、花の成長具合など、自分が頑張っても上手く行かないこともあります。でも、やっぱり花が咲くと心に湧いてくるものがあります。それに花を買いに来た人に「でけえな!」「良い花だ」などと言って貰った時は、農業をやっている実感が湧き、そういう声には力をもらいます。
 農業を始めた時に立てた事業計画書と比べて、現状はまだまだ差があります。やりがいも大事ですが、しっかりと収入を得るのも大切です。先ずは計画した数値を、自分のダリアで実現します。


ダリア

 メキシコからグアテマラの高地が原産のキク類の花です。一輪で豪華な印象を与えるのが特徴。祝い花として知られ結婚式などの需要が高い一方で、最近はお盆の仏花としても利用されています。井上さんは暮らしの中の観賞用として使ってもらいたいと語ります。「テーブルに一輪あるだけで、空間が物凄く華やかになります。水を毎日変えると長持ちします。地元の人は漂白剤を入れると意外と長持ちするといいますね」。