全農
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生産者の声
あしきた牛
友田勝久さん(45歳)
熊本県水俣市
畜産農家(繁殖牛)

俺達、農業者は農地を守る役目がある
国は何を伸ばし守るべきか
もっと考えた方が良いのではないか

 牛舎はいつ誰が来ても良いように綺麗にしています。綺麗な方が整理整頓されて作業もしやすいし、気持ちよく仕事ができるんですよ。親父も綺麗好きで昔からそれが当たり前の中で育ちました。私が就農した約20年前は、子牛の価格が1頭30~40万円で、その金額で経営が成り立っていました。しかし今は、配合飼料の価格は1.5~2倍に上がっており、60万円くらいで売れないと採算が合わない状況です。我が家ではもうすぐ長男が修行から帰郷して家に入る予定なので、経営方針を変えていかなければなりません。規模拡大が定石ですが、資材高騰の折に牛舎を増やすのも考え物です。それより、子牛の質を上げる方向にもっと力を入れるよう考えています。今取り組んでいるのが、良い血統の受精卵の利用です。良い牛を増やしながら、地元の米農家と連携して飼料用の稲を活用し、耕作放棄地に牧草を生やすなど、餌の地元自給率を上げていこうとしています。

農家の結婚は早い方が良い  今の農業は厳しい時代で、おかしくなった世界情勢が追い打ちをかけています。我が家には後継者はいるのですが、本当に後継者を入れて大丈夫かと考えることもあります。本来、長男はもう数年、他所で働く予定でした。しかし、子供ができたので戻って一緒に畜産をやる流れになったんです。私は45歳でお爺ちゃん、妻は42歳でお婆ちゃんです(笑)。私たちも結婚が早くて、妻は成人式の時には既に子供がいました。農家は結婚が早い方が良いと思います。出会いの場が少ないし、自営業で忙しい。特に畜産は休みがなかなか取れませんから。自分達も家族旅行をしたことがありません。長男に任せられるようになったら、たまには夫婦で旅行も良いかなと思っています。

農業は、食は国の根幹ではないか  今、長男が働いている熊本県北部は、国と県が何千億と補助金をつけた半導体産業に沸いています。広大な工場が建ち、関連企業が集積し、道路も新たにつくられます。それらの用地に多くの田畑が高額で買い取られました。牧草地を作れなくなった農家も多く、畜産の餌の自給率はまた下がります。農地が減れば農業人口も減ります。そうなると食料だってますます輸入に頼らなければいけなくなる。円安の状況下でさらに食料価格が上がる可能性もあるわけです。俺達、農業者は農地を守る役目がある。その農地が何を生み出しているのか。半導体も重要な産業ですが、国にはもっと農業や食料を考えてもらいたいと思いますよ。


あしきた牛

 熊本県内でも温暖な県南で育つあしきた牛は、JA熊本経済連肉畜枝肉共励会で何度もグランドチャンピオン賞を受けています。熊本の上位牛肉ブランド「和王」になる率も、あしきた牛は7割を超えます。当地で育った子牛も質が高く、県内の他、近江牛や松阪牛をはじめ全国の肥育農家などに買われています。生産者の友田さんは「JAあしきた畜産部会は20~40代の若い生産者が8割を占めており、まとまりがあってSNSなども使って情報交換を密に切磋琢磨しています」と語ります。