全農
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生産者の声
デコポン
竹林鉄也さん(64歳)
息子:公也さん(33歳)
熊本県葦北郡芦北町
不知火、甘夏 生産者

我々は山から下りて次につないだ
デコポンと若い後継者が見せる
産地の次の姿に期待します

 当地は平地の少ない場所で、私が就農した約40年前、みかんの樹は山の急傾斜地に植わっていました。結構危険な場所でも、上の世代は苦労しながら作業をしていたんですよ。その頃のみかん農家は経営的に安定しており、我々世代は「先祖から預かった土地を守り、次の世代に渡す」のが責任だと感じていました。しかし、世の中が進むにつれて農業も機械化が進んでいきます。生産性が向上した分、価格を抑えた農産物が市場に出回るようになるわけです。しかし、当地は車も入らないような急傾斜地に農園があるので、機械化ができませんでした。値段が高ければ売れないし、かといって安値では労力に見合わない。そんな状況では、若い後継者に「土地を守るんだ」という思いがあったとしても、食えなければ守れないし、親だって承継させられません。それで、我々世代は山を出て平地に樹を植える選択をしたんです。

デコポンが救った産地の未来  田んぼだった場所に施設団地をつくり、ハウスを建てながら、効率良く安定的に生産できる環境を整えました。そうする中で、後継者も少しずつ増えるようになったんです。熊本県の柑橘生産者にとって大きかったのは、デコポンが出てきたことです。それまでの主力である甘夏の代わりとなる新品種の登場で、経営的にも未来が見え、今の若い後継者が高い関心を示すようになりました。正直、デコポンがなければ産地は廃れていたと思います。
 デコポンは厳しい規格をクリアしたものだけが、そう呼ぶことを認められます。デコポンづくりは非常に難しく、天候の影響を抑えられる施設栽培でないと合格率は上がってきません。そのため、我が家でも施設デコポンの面積を拡大していく予定です。規格が厳しい分、合格した本物のデコポンは本当に美味い。どの果実にも負けんという自信を持っています。

次の世代への期待  世間からの評価も高いデコポンは、まだまだ出荷量が少ないので高いという印象もあると思います。合格率を上げていくのは生産者の努力ですから、県内の生産者が知恵を絞って切磋琢磨していく部分ですね。これからは我々のような年寄りではなく、若い後継者の時代です。我が家も来年くらいに息子に事業承継をする予定です。息子たちが産地を盛り上げ、さらに若い世代が関心を持つ魅力ある農業が発展していく姿に期待しています。


デコポン

 デコポンは1993年に熊本県果実農業協同組合連合会が商標登録したブランド名。品種「不知火」の中で厳しい規格をクリアしたものだけが、デコポンとして流通します。「甘さと酸味のバランスが絶妙で食べやすさも人気の理由」と語る農家歴13年、後継者の公也さんは、一つひとつの表情の違いを注意深く観察し、不知火と会話をしながら世話をしているそうです。「表情の違いを見つけるのは楽しい作業です。手をかけた分だけ返ってくるので、やりがいがあります」。