全農
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生産者の声
長崎みかん
谷川義浩さん(61歳)
長崎県西彼杵郡長与町
温州みかん、中晩柑、
いちじく生産者

若手生産者が将来を描ける
ITやAI技術も取り入れた
新しい農業に期待したい

 山が多く平地の少ない長崎県では、山の斜面と温暖な気候を生かした温州みかん栽培が昔から盛んでした。傾斜地は水はけが良くて糖度の高いみかんが育ちます。当地の温州みかんは以前は長与町の名前を冠した長与みかんという名で出荷していましたが、現在は上位ブランドから順に「長崎の夢」「味ロマン」「長崎みかん」として流通しています。糖度の違いなどでブランド分けされており、品種や時期によって基準糖度の値はそれぞれ異なります。
 9月下旬から収穫する極早生はそれほど糖度が上がりません。10月下旬から早生を収穫し、11月の終わりから普通温州の伊木力系や青島、大津などの高糖度系を収穫していきます。1月からは中晩柑の収穫に入ります。このような産地リレーは労力の分散を目的に徐々に進みました。元々は貯蔵みかんの産地で、倉庫で寝かせていたものを3月くらいまで出荷していたんです。長持ちするみかんづくりが得意で、今でも日持ちが良いという評価をいただきますね。

変化する10年後の農業  近頃は以前に比べて栽培方法もかなり変化があります。圃場の地面をシートマルチで被覆して、土壌水分をコントロールすると同時に、光反射効果を利用して糖度が高く着色に優れた果実を多く栽培する方法が当地でも進んでいます。また、国の事業でITやAIを用いた試験的な栽培も始まっています。例えば、ドローンでの防除や、圃場の管理者が歩く後ろを運搬車が付いてくるシステム。他にもシートマルチの下に点滴潅水チューブを敷設して、センサーによって土壌が乾燥すると自動的に散水したり連絡が来るシステムがありますね。選果場に出したみかんの選果データが数時間後にスマートフォンに送られてくる仕組みなどは、普及が進んでおり本当に便利だなと思います。
 長崎のみかんづくりの主力層は私より年上になりますから、農業のIT・AI化に抵抗のある人もいるでしょう。しかし今後の若い農家は、積極的に取り入れていくと思います。10年もすれば農業と農家の姿が大きく変わっているかもしれません。それに地球温暖化も気になる変化で、特に二年前は開花直後に急激に温度が上昇して果実が大きく成長する前にボロボロと落ちてしまったんです。「あんなに花が咲いていたのに、一体どこに行ったと!?」と驚くくらいで、結局不作の年となりました。地域農業は今後もさまざまな課題と向き合わなければなりません。この先、何年農家ができるかわからないですが、JAと関係機関と協力し合って子供たち孫たちの世代に残していきたいと思います。


長崎みかん

 長崎県内の柑橘栽培の歴史は古く、大村湾に面した温暖な気候の長与町では江戸後期に温州みかんの栽培が開始されたと言われます。現在でも、秋には町内の多くの山がみかん色に染まるほど栽培が盛んです。谷川さんは「質と量の両方にこだわった栽培を心掛けるのが当地の特長。厳しい出荷基準をクリアした『長崎の夢』や『味ロマン』は本当に美味しいですよ」と語ります。