AGRIFUTURE Vol.68
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P.03各農家の収益を集めて地域農業のために役立てるそれが農業協同組合のあるべき姿ですよ農業のホント ホンネ ホンキ榎本昌之さん(53歳)神奈川県足柄下郡湯河原町柑橘生産者We reveal the beauty of agriculture from the perspective of farmers, their wonderful produce and the history of regional agriculture. 湯河原は昔からのみかんの産地で、その段々畑は、当地の代表的な風景の一つです。山の斜面を平たく削っては、そこから出た石で築かれた幾重もの石垣は、先人の苦労の賜物です。栽培技術や品種改良の研究にも熱心で、地元の篤農家・大津祐男さんが育種し、1977年に品種登録された大津四号は、美味しいミカンと全国的にも評判で、今でも盛んに栽培されています。私も柑橘類の農場175a(1a=100㎡)の内、100aは大津四号ですね。その他にも収穫時期の異なる4種類を手掛けており、周年で収益があるように工夫しています。近年は、神奈川県農業技術センターが開発し、2006年から出荷が始まった湘南ゴールドに力を入れているんです。 この品種は一般的なみかんに比べて4~5倍の出荷値が取れるため、多くの生産者が地域の新しい軸の一つとして期待を寄せています。しかし、たくさん生る年と少ししか生らない年が交互に現れる隔年結果の性質や、低温に非常に弱く露地栽培だと安定しない点など、育てるのは中々に難しく、各農家が栽培技術の向上を目指して研究に取り組んでいるところです。生産部会には約200名が所属しており、収量は約100トンです。爆発的に普及するのは今後のことになると思います。神奈川県内では随分と知られてきましたが、関東エリアでの知名度はまだまだなので、PRする機会も増やしていきたいと思っています。 わたしは現在、地元JAの理事を務めており運営にも参画しています。農業協同組合の理事は各地域の代表として専業農家が多く選出されています。しかし、都市近郊の土地柄ということもあり、現在では兼業農家や会社員を定年退職された方が、地域の田畑を守りながら務めるケースもみられます。地元JAの組合員の割合を見ても専業農家の人数が少なく、農業収益をメインとする体制が取れないのも現状です。神奈川県では今やJAも金融機関のようなイメージを持つ人も多いでしょう。ただ、農業で頑張り、農業で食べていきたいという人もおられるので、もう少し農業に対する指導、販売、技術の普及など、営農部門に力を入れてもらいたいと私は思っています。営農部門で働く職員の数も少なくて、一人何役も背負いながらやってくれているんです。 そもそもJAが金融に強いと言っても、もともとは農家の収益で成り立っていたわけです。農業収入が上がれば、農家は必然的に共済にも入ろう、お金も預けようとなります。別の財布から簡単にひょいっと持ってくるのではなく、農業によって生まれた利益をJAが集めて、その資金で、営農部門の充実を図り、農業に還元することでJAと農家が潤うという好循環に再調整されていけば良いなと思っています。そのためには、農業に対する世の中の関心をもっと大きくして、若者を引き付けるような取り組みにも力を入れる必要があるでしょう。農業体験が各地で人気を得ているので、湯河原の温泉旅館とタイアップして都会の生活者を呼び込み、農業をPRするもの良いでしょうね。 私の息子は全農で働いており、国内の畜産農家に飼料を安く提供するために頑張っているようです。農家としての私の姿を見て、同じ業界に進んでくれたことは嬉しく思いますね。息子とは日本の農業の将来の話などもしています。私は地域で力を尽くすので、息子には日本の農業を改革してもらいたいと期待しています。期待を集める新品種農家のための農業協同組合

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