AGRIFUTURE_Vol.46
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P.05 クワイは芽が出ていることから縁起の良い食べ物として、正月料理に古くから用いられています。埼玉県での栽培の歴史は古く、江戸に近い草加市を発祥とし、綾瀬川と伝右川の流域に並ぶ越谷市、そしてここ旧浦和市と川上に順に広がりました。クワイは水田で育てるのですが、栽培にも収穫にも大量の水が必要なので、川の流域が栽培に適しています。私の爺さん達は田んぼから採ってきた泥だらけのクワイを、伝右川の水できれいにしていたそうです。親父の世代の人達は機械化を進めることで省力化を図り、産地の最盛期を築きました。ほとんどがクワイの食文化のある関西方面へ出荷され、地元ではあまり出回っていませんでしたけどね。 現在は、全国的にクワイの食文化が薄れてきて需要が減っているのですが、同時に供給量も下がりバランスが取れている感じです。埼玉県の産地でも東京に近い川下の方から都市化が進み耕地が減っています。川上の旧浦和市も同様で、埼玉スタジアムの場所だって元々は、クワイの田んぼがあったわけですからね。 さいたま市民でもクワイを知らない人は多いですよ。特に第2次ベビーブーム前後の年代は空洞化していると思います。当時は食育という意識は薄かったですからね。今は全農が動いて学校給食に出してくれるので、子供が親に「これがクワイだよ」って教えてくれるみたいです。今の子供たちが大きくなって、将来どこで生活することになっても「クワイ知らないの? これはめでたい食べ物だよ」と広めてくれれば良いなと思っています。やはり地元の人に自分が作っている野菜を知ってもらえるのは嬉しいもんですよ。最近は地元産に注目する動きが飲食日本の伝統食材クワイ食の常識が失われる状況若谷真人さん(42歳)埼玉県さいたま市緑区クワイ生産者食や農業に一歩近寄るだけで随分と世界が開けてもっと美味しく食べられると思うんですよ

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