AGRIFUTURE_Vol.46
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が自分の中で生まれたんです。親父は「農業は安定しないし儲からない。公務員のままでいろ」と言う人でしたが、亡くなる一か月前、癌に苦しみながら「やっぱり継いでくれ」と本音を漏らしたんです。それを聞いた時、自分は今まで農業を避けてきたけど、ここで農業をしなかったらきっと自分は死ぬ時に後悔すると想像したんですよね。 親父が死んでから榎本家はがらりと変わりました。母親は自宅を改装して「農家レストラン(菜七色)」を始めました。私が作ったミニトマトをはじめ、我が家の農園で採れた野菜を使って料理を出しています。元シェフで野菜ソムリエの姉が、母を色々とサポートしていますね。姉は農水省の農業女子プロジェクトに参加したりする人で、私も飲食店への販路拡大やニーズの聞き取りなどで私を助けてくれています。協力し合っているというより、お互い好き勝手やってやりながら、利用できる部分は乗っかるという感じです(笑)。 農業以外のことを手掛けると、忙しくなるのですが楽しいことも多いんですよ。以前、農家レストランで流しそうめん大会をやったんですが、自分達で告知して子供たちを集めたら、2日間で120人くらいになったんです。長い水路を作って2階から流したんですけど、地元の設計士や工務店の方が「楽しそうだから一緒にやろう」と言って力を貸してくれました。そうやって輪が広がるのも財産ですよね。 これからはもっと地域とのつながりを増やして、この地域の農業が抱えている問題にも対応したいと考えています。耕作放棄地を借りるために規模を大きくするとか、研修生を受け入れて独立させるとか、先々の準備も始めているところです。「地域のために何とかしたい」という気持ちがあるので。後悔しないようにね。

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