agrifuture vol.48
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P.05 結婚を機にしっかりとした家庭を築くために家業を継ぐことにしました。子供の頃から小遣い稼ぎで畑仕事を手伝っていて農作業を肯定的にとらえていましたし、やればやるだけリターンのある農業にかけたんですよ。 始めた頃は、上手くいかずに本当に苦しみました。近くの同年代の生産者が上手にやっている姿には、励まされる一方、焦りもしましたよ。毎年のように「もう嫌だ、辞めたい」と考えていましたね。仲の良い友達に「もう無理だ…」と弱音を吐露したり、努力しても思いどおりにならなくて「どうしたらええんや」と歯がゆい思いをしたり…。でも、ここで辞めたらみっともないと踏ん張って続けました。10年近くが経った今、当時を振り返ると悩んで苦しんだ分、自分でも強くなったと感じますし、どっしりと構えられるようになったと思います。 僕は毎年、「来季こそはすべてを一番良い実に仕上げてやろう」と思うんです。経営的には面積も増やしたいのですが、今と同じ味の果実を作れないと意味がないという気持ちが強くて二の足を踏んでいます。果物は特に「美味しいからまた食べたい」と思ってもらえる味を維持していくことが大事です。そうしないと数ある柑橘類の中で、土佐市の小夏を選んでもらえませんから。 最近は土地が空きつつあります。担い手が不足して田んぼや畑に太陽光パネルを設置している場所もちらほらと見かけるようになりました。あの様子を目にすると農家の自分としては、やはり寂しい気持ちになるんですよ。田畑を田畑としていつまでもつないでいけるように、そして、自分の子供が20歳になった時に、僕たちの働く姿に魅力を感じて「俺もやってみたい」と言ってくれる理想に向かって、より良い小夏を作り、地域と農業を盛り上げていきたいと考えています。就農時の苦労が今の糧「また食べたい」を追求西原夫妻久史さん(33歳) 秀香さん(31歳)高知県土佐市出間小夏生産者(久史さん)

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