AGRIFUTURE_Vol.47
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P.05 僕らが子供のころに比べて、メディアでの農業の取り上げられ方は随分と変わってきたと感じます。テレビの料理番組などで、農場を訪れて新鮮な野菜を収穫して「美味しい」と言うシーンを見かけるたびに、日本で農業に対する見方は好転してきているなと思うんです。小学校高学年と低学年の息子2人も、親父が農業をしていることへの変なコンプレックスはないように感じますね。 僕が小学生の頃は(農業に対する差別や偏見を感じていたので)農家であることに物凄いコンプレックスを持っていました。畑から泥だらけで帰ってくる両親を見ると嫌な気がしましたし、学校で家の仕事を発表する時などは言いたくありませんでしたね。親がサラリーマンの方がどれだけ良いかと思いながら学生時代を過ごしたので、学校を卒業してからは会社員として働き、結婚して実家を出て暮らしていたんです。 ただ、30歳を過ぎた頃、親や周囲から地域の抱える将来の不安などを聞かされて心が動きました。悩みましたし葛藤もありましたが、最終的には「家が農業をやっていて、地域環境にも恵まれていて、農業をやれるチャンスがあるんだ」と考え、コンプレックスとかそういう問題は脇に置き、「これから一生やる仕事だ」と腹をくくり就農しました。 このタイミングで踏み切ったのは、集落で農業を営む60~70歳代の先輩方が元気なうちに栽培技術を学ぶとともに、将来的な地域農業の維持に向けた布石を打つには、これ以上先延ばしできないと思ったからです。ここ袈裟尾という集落の就農者は僕の次に若い人が既に高齢者ですからね。世代がすっぽりと抜けていて、後継者のいない危機的な状態だったんです。農業に対するコンプレックス集落を牽引する高齢者上野洋一さん(38歳)熊本県菊池市袈裟尾ごぼう生産者農業からずっと距離を取っていましたが集落の危機的な状況を聞いて腹をくくって一生の仕事にしました

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