AGRIFUTURE_Vol.47
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P.03赤星浩貴さん(29歳)熊本県菊池市七城町カスミソウ生産者地域の先輩方が子供の頃に与えてくれたことを今の子供たちに返してたくさん笑ってもらいたいんですだって、私は菊池が好きですからね 中学校を卒業した頃から「家を継いで農業をするんだろうな」と思っていました。親や親戚からも「継ぐと?」とよく言われていて、小さい頃から農場で遊んでいましたし、田畑が自分の生活の一部でしたからね。好き嫌いというのではなく自然と流れを受け入れることができたという感じです。二十歳前に農業以外の世界を知りたくて、数年間街で働いてから本格的に就農しています。 農業を好意的に捉えることができたのは、親父が手掛ける「菊池のカスミソウ」が成功していたことも影響するでしょうね。菊池地方でカスミソウ栽培が始まったのは約40年前です。当時はまだマイナーで栽培方法も確立されていなかったそうですが、親父たち数人の生産者で始めて、菊池を全国トップクラスの生産地にまで押し上げました。そういえば周囲から「お前の家は花御殿じゃ」と言われたこともあります。 親父は花に「今日はどげんや?」などとよく話しかけていて、一本一本、顔が違うと言いますね。栽培に関する相談をすると直ぐに的確なアドバイスが返ってきますし、我が親父ながら凄いなと素直に感心しています。研修などで各地の市場に出向いた際に「菊池のカスミソウは凄い」と評価してくれる声を聞くとやる気が出ると共に、親父や地域の先達の努力の積み重ねを想いますね。 私は就農して6年目で、今はまだ親父のやり方を理解し、技術を見て盗んでいる段階ですが、カスミソウの栽培が安定したら、少しずつ別の品種を作ってみたいと考えています。先輩たちのカスミソウを見習って、自分たちの世代でも新しい花に挑戦し、可能性を広げることで農業を活性化していきたいという思いがあるからです。地域では高齢を理由に離農される方も見かけますし、同年代の農業者が集まるJAの青年部でも「活性化」はよく話題に挙がります。 最近の青年部では異なる作物を作る農家間の交流を盛んに行っています。花農家の私の農場に、野菜や畜産農家を研修に招いて作業を見てもらい、私も彼らの仕事場にお邪魔するというものです。同じ農家でも「こんなことしているんだ」という発見がお互いにあるんですよ。横のつながりを密にして、他種類の農業から何かプラスになるものを得ようとしています。 菊池は大昔から現在に至るまで農業の盛んな場所です。農業が賑やかになれば地域にも活気を与えられるでしょう。私は菊池が好きなんですよ。水と空気が美味くて、自然が多くてここに居るととても安心感を得られます。ですから、昔、当たり前のように地域の先輩たちが幼い自分にしてくれたことを返していきたいと、地域のイベントにも積極的に参加しています。 近くの堤防沿いで毎年秋にコスモス祭りが開催されるのですが、河川敷を私たち農家が耕してコスモスを植えているんです。本業とは関係のないことですが、イベントに参加すると、地域で別の商売をしている方とも一緒に取り組めるので地域の親睦が深まると感じますね。また、同じように協力している知り合いの子供と顔馴染みになったりして楽しいことも多いんですよ。 子供らには未来の地域を担ってもらわないといけませんからね。子供の頃の記憶をどこまで覚えてくれるかは分かりませんが、自分にできることはやってあげたいので保育園や小学校での田植えや稲刈り体験にも出かけます。時々、農業をやっている先輩の子供が授業にいたりして「赤星さんだ」と声をかけてくれるんですけど、その時は「おう、将来は農業を継げよ!」と返すようにしています(笑)。親世代の成功体験横のつながりで作る活気菊池のための恩返し

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