AGRIFUTURE_Vol.47
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肥後北東部を巡る取材先:JA菊池 北に筑肥山地、東に阿蘇外輪山を望む菊池地方は、山々を覆う火砕流堆積物がろ過した豊富な湧水を源流とする菊池川、迫間川、合志川などが流れ潤す九州有数の農業地帯である。 古代から豊穣の地として知られる菊池は、奈良時代には九州を統治する地方機関・大宰府の経済を支え、この地に築かれた中国や朝鮮半島からの侵略に備える古代山城「鞠智城(きくちじょう)」が築かれるなど、九州屈指の要所として栄えた。やがて中世には、豊かな土地を背景に力を蓄えた菊池一族が九州一円に勢力を拡大し、華々しい活躍を見せる。武勇だけでなく国家に対する忠臣としてその名を全国に轟かせた菊池一族は、乱世にあって一族の話し合いで地域を統治するという現代の議会制民主主義の精神を代々の家憲「寄合衆内談の事」とし、また、学校を建てて文教の郷・菊池の基礎を築くなど、先見的な取り組みによって後世に大きな影響を与えた。 江戸時代以降も食料基地としての菊地地方の注目度は高く、更なる増産を目的に「馬場楠井手」や「古川兵戸井手(ふるかわひょうどいで)」などの治水事業が行われ、良質な米どころとして地域の食と経済を支え続けた。現在では米に加えて、国内屈指の質・量を誇る「カスミソウ」や「すいか」、地域ブランドの「きくち水田ごぼう」や「えこめ牛」をはじめ、多様で豊かな農畜産物を育んでいる。 この地域では、ベテラン生産者に加え、自分たちの祖先や故郷を想い、若くして農業を志す生産者が増えつつある。「土地と地域を荒らさぬよう、腹をくくって一生の仕事にすると決めたんです」と語る姿は、たとえ自陣が劣勢になっても力の限り一心に働き周囲を牽引した菊池一族の生きざまに重なる。彼らの覚悟と活躍が、先人から受け継いだ土地や豊かな湧水を次の「菊池一族」につないでゆく――。JA菊池の管轄地域は、熊本県菊池市、合志市、菊池郡大津町、菊陽町です。清冽な湧水が潤す豊穣の地熊本県菊池市菊池郡菊陽町菊池郡菊陽町菊池郡大津町合志市P.01

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