AGRIFUTURE_Vol.45
8/16

P.07工藤憲児さん(38歳)青森県平川市米生産者「青天の霹靂」が農業の枠を超え青森県全体を活気づける存在になるよう育てていきます 我が家は親父の代から米専門に農業を営んでいます。私は就農して約10年になりますけれども、これからは負けない農業を目指していかなければならないと感じています。TPPをはじめ今までにはない状況に、ただ反発して文句を言っていても仕方がありません。変化を受け入れながら生きていく農業を構築して行かなければならないのでしょう。 量を比べれば海外には太刀打ちできません。でも、日本人には品質という強みがあります。安心安全はもちろん農業であれば「味」です。これはハンパなく日本が優れていて、味への探究心は絶対に負けないと思います。だから、自分達の長所を伸ばすための対策をしっかりと準備していくしかないと思います。 そういった背景もあり、2015年に青森県産で初めて特A米に認定された品種「青天の霹靂」には、私自身もとても期待を寄せています。この品種は青森県産業技術センターを拠点に10年の歳月をかけて生み出されました。親父が主要メンバーとして参画しており、私も親父の下で栽培をはじめ色々と手伝ってきました。 青森県にはりんごやゴボウ、ニンニクなど美味しい産物がたくさんあります。しかし、多くの人が青森の米って聞いたことないと思うんですよ。「美味しいお米を作りたい」という県内の米農家の想いはとても強かったんです。青森県としても特A米をぜひ作りたいという気持ちがあり、「青天の霹靂」のプロジェクトが誕生しました。今まで作ってきた米に比べて、土作りや夏の追肥方法などが特殊で、栽培には手間もかかりますし、神経もすり減らします。一般圃場での収穫は2015年が最初なので、年数を重ねるにつれて栽培技術も進化し、品質はもっと良くなっていくでしょうね。 今のところは土壌や気候の関係で、津軽地方の一部では良く実りますが、その他の地域では食味の規定値をクリアするのは難しいようです。ですが、先ずはできる場所が先頭になって盛り上がっていけば、やがては津軽全体、青森県全体と活気が広がっていくのではないかと考えています。嬉しいことに「青天の霹靂」には県内の米農家さんが一番注目しており、「食べてみたい」「作ってみたい」という声がとても多いんです。作ってくれる人がその良さを認めてくれれば、その周りにいる人々もついて来て、良い方向に進めるのではないかと思います。 米価は年々下がっています。約30年前の良かった頃に比べれば今は半値くらいです。そのくせ機械代は上がる一方です。最近では排ガス規制でコンバインや農業用の車にも排気ガス規制装置が取り付けになって値段もボンと上昇しました。田んぼはCO2を吸収してくれますし、「こんな田舎で排ガス規制なのか…」と正直思いましたよ(笑)。昨年もこの地域では、一気に米の値段が2割程度下がってしまい、収穫すると赤字になるので、刈取りを止めて田んぼもそのまま放棄するという農家さんも出てしまいました。 外から見ると、米農家はなんだかんだ言っても保護されていると思われる方も多いでしょうね。お偉いさんは「競争力をつけてハングリーに行け」などと言いますが、米価の下落と資材費の上昇が続く中で「ハングリーかよ…」と思いますよ。もう少しこの状況は何とかならないかとは思いますが、私達生産者が下向いていても仕方がないですからね。負けないように精一杯やって、美味しいお米を作り続けますよ。変化を受け入れる農業の模索県内米農家の悲願だった特A米米価の下落と資材費の上昇

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

page 8

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です